「同じような診察だったのに、私よりも子供の会計のほうが高いのですか?」
開業すると、こうした質問を患者さんから受けることがあります。これは会計ミスではなく、6歳未満の患者には初診料・再診料に「乳幼児加算」がつくためです。制度自体はシンプルですが、他の加算との組み合わせや自治体の医療費助成との関係など、開業準備の段階で誤解しやすい部分もあります。
実際によくある質問の形で、乳幼児加算のしくみを整理します。
なお、具体的な点数や金額は改定のたびに変わる可能性があるため、この記事では制度の考え方を中心に説明します。最新の点数は厚生局の告示や公式資料で確認してください。

Q1. 乳幼児加算とはどんな制度ですか?
6歳未満の患者を診察した場合、通常の初診料・再診料に一定の点数が上乗せされる制度です。乳幼児は症状の訴えが不明確なことが多く、丁寧な問診・診察や、保護者への説明・指導に通常より時間と手間がかかります。乳幼児加算はこうした診療の手厚さを評価するために設けられています。小児科に限らず、内科や耳鼻咽喉科などどの診療科でも、6歳未満の患者を診れば算定できる仕組みです。
Q2. 「6歳未満」の基準日はいつですか?
6歳の誕生日を迎える前日までが対象です。小学校入学のタイミング(4月1日)とは一致しないため、誕生日が年度の途中にあるお子さんの場合、受付で年齢確認を誤りやすいポイントです。
「6歳未満」と「未就学児」は基準が異なる点にも注意が必要で、未就学児であっても6歳の誕生日を過ぎていれば対象外になります。電子カルテやレセコンで生年月日から自動判定できる設定になっているか、開業前に確認しておくと安心です。
Q3. 妊婦さんにも同じような加算がつくのですか?
2026年8月現在はつきません。かつて「妊婦加算」という、妊婦の診療に対して同様の加算がつく制度がありましたが、2019年1月に凍結され、2026年8月現在も復活していません。「妊娠しているだけで医療費が上がるのはおかしい」という批判を受けての措置です。古い資料や書籍を参考にするとこの点が反映されていないことがあるため注意が必要です。
Q4. 時間外に受診した場合、乳幼児加算と時間外加算は両方つきますか?
いいえ、単純な足し算にはなりません。時間外加算・休日加算・深夜加算は、乳幼児加算とは別に、6歳未満専用の点数に置き換わるしくみになっています。乳幼児加算の点数にそのまま時間外加算の点数を足す、という計算にはならない点に注意してください。
Q5. では夜間・早朝等加算も同じように置き換わりますか?
いいえ、こちらは逆に上乗せです。診療時間内の夜間・早朝の対象時間帯に乳幼児を診た場合、乳幼児加算と夜間・早朝等加算の両方を算定します。時間外加算は「置き換え」、夜間・早朝等加算は「上乗せ」という違いは、レセプト担当者の間でも混同されやすいので、開業時にスタッフ向けのマニュアルへ明記しておくとよいでしょう。
Q6. 自治体の子供医療費助成があれば、乳幼児加算は算定しなくてよいのですか?
いいえ、通常どおり算定が必要です。多くの自治体では子供医療費助成制度により窓口での自己負担が無料や低額になっていますが、これはあくまで自治体が自己負担分を肩代わりする仕組みで、診療報酬の点数計算とは別の制度です。医療機関側は乳幼児加算を含めた点数でレセプトを作成し、自己負担の扱いは各自治体の医療証等に基づいて別途処理します。助成の対象年齢や助成割合は自治体ごとに差があるため、開業予定地の制度を事前に確認しておきましょう。
Q7. きょうだいで同時に受診した場合、それぞれに加算はつきますか?
はい、患者ごとの算定になります。きょうだいが同時にかぜで受診した場合、それぞれの初診料・再診料に個別に乳幼児加算がつきます。「まとめて受診したから割引になる」といった制度はなく、あくまで一人ひとりの診察内容に応じて算定する点は、患者さんへの説明時に補足しておくとよいでしょう。
Q8. 開業前にどんな準備をしておけばよいですか?
制度を理解するだけでなく、運用面の準備もあわせて進めておくと安心です。電子カルテ・レセコンで生年月日から6歳未満を自動判定できる設定になっているか確認すること、受付・会計スタッフに「時間外系は置き換え・夜間早朝等加算は上乗せ」というルールを周知しておくこと、そして患者から金額について質問された際に簡潔に説明できる一言を用意しておくことの3点が、特に開業直後に役立ちます。忙しくなってから慌てて対応するより、開業前に一度決めておく方が負担が少なく済みます。
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本記事は2026年8月時点の公開情報をもとに、乳幼児加算の制度の考え方を解説したものです。具体的な点数・金額は改定により変動するため、実際の算定にあたっては最新の厚生労働省告示・通知および所轄の地方厚生局への確認をお願いします。
